2024年に発生した「いすみ鉄道脱線事故」は、運輸安全委員会の報告書によると「枕木の腐食やひび割れ」が直接的な原因でした。
腐食が進んだ木製枕木が連続して損傷したことでレール幅が基準値を超えて広がり、列車の横方向の圧力に耐えられず、最終的にレールが倒れて脱線に至ったのです[1][2][3]。
枕木の耐用年数とは?
鉄道に使われる木製枕木は、実は思ったよりも寿命が短いのをご存じでしょうか?
防腐処理あり木製枕木:10~20年程度が目安[4][5] 無処理枕木:2~12年しか持たないケースもある[6][7] 鉄道用本格枕木(防腐処理済み):20年程度が一般的[8]
枕木の種類
耐用年数(目安)
備考
無処理木製枕木
2~12年
劣化が早く交換頻度が高い
防腐処理木製枕木
10~20年
鉄道で広く採用
PC(コンクリート)枕木
40年以上
強度・耐久性が高く主流化
つまり木製枕木は、定期的な点検と早めの交換が不可欠なんですね。
脱線の原因と経緯
いすみ鉄道の脱線事故には、「分かっていたのに対処が不十分だった」という深刻な背景があります。
事故の 約8か月前 に実施された定期検査で、1,600か所ものレール幅異常が確認されていた ところが補修できたのは、わずか 23か所(約1.4%) にとどまっていた[1][2] 管理体制の不備や予算不足が原因で、腐食した枕木が放置され、局所的な強度低下を招いた[9]
結果として、異常が連鎖的に拡大し、大事故につながってしまいました。
レール幅(ゲージ)の基準値と逸脱
鉄道の安全を左右する「レール幅(ゲージ)」には、明確な基準があります。
在来線では、通常+19mmまでが限度 これを超えると「異常」と判断され、速やかな補修が必要[10][11]
今回の事故では、この許容値を大幅に超えるレール幅拡大が確認されていました[1][3]。
つまり「基準を超える危険な状態」を知りながら十分な対策が取れなかった、ということです。
運輸安全委員会の勧告と今後の課題
事故後に公表された報告書では、いすみ鉄道に対して以下の改善が勧告されています。
レール・枕木の適切な管理と補修の徹底 木製からPC枕木(コンクリート製)への切替計画 軌道変位管理方法の再検証と改善[2][3]
特にPC枕木は耐久性が高いため、今後の地方鉄道のインフラ更新において有力な選択肢となるでしょう。
まとめ:枕木管理は鉄道安全の生命線
今回のいすみ鉄道脱線事故は、「老朽化枕木の放置」が引き金でした。
木製枕木の寿命は最大20年程度 定期検査で異常が発見されていたが、補修はほとんど進まず レール幅が基準値を超えて拡大し、脱線に至った。
つまり、点検・保守を怠るとインフラ事故は必ず起きるという教訓を示した事例です。
鉄道利用者の安全を守るためには、今後も「予防保全」の視点が欠かせません。
📌 参考情報・引用元
いすみ鉄道脱線は枕木腐食が原因(Yahoo!ニュース) いすみ鉄道脱線(KICKS BLOG) いすみ鉄道脱線 補修不備が原因(沖縄タイムス) 枕木の耐用年数と腐食対策(ガーデンデザインH) 鉄道事故調査報告書(国土交通省)