鹿児島県垂水市の大型風力発電計画、採算合わず事業中断へ
鹿児島県垂水市の高峠周辺で進められていた県内最大規模の風力発電事業が、採算悪化を理由に中断されることが決まりました。事業主体は豊田通商の子会社「ユーラスエナジーホールディングス」で、環境面やコスト面の課題が積み重なった結果の撤退です[1][2][3]。
事業中断の理由とは?
事業が止まった背景には、複数の深刻な課題がありました。
鹿児島大学高隈演習林との重複 計画地のおよそ8割が大学の演習林に重なり、教育・研究への影響が懸念されました。2023年12月には鹿児島大学が正式に建設受け入れを拒否しています[1][2][3]。 資材価格・人件費の高騰 近年の建設資材費や労務単価の上昇により、収益確保が困難に。とくに鉄鋼や輸送コストの値上がりが大きな負担となりました[4]。 人手不足の深刻化 地域の労働力不足が、建設スケジュールや維持管理の見通しをさらに不透明にしました[5][6]。
計画されていた風力発電所は最大32基、総出力約19.2万kWという国内陸上で最大規模のもの。にもかかわらず、これらの障害によって事業継続は困難と判断されたのです。
計画の経緯と環境面での懸念
この事業は2022年から環境影響評価手続きがスタートしていました。ですが、以下の問題が相次いで浮上しています。
鹿児島大学や学会から「教育・研究の支障」「生態系への影響」といった反対意見が出された[7][8]。 地元住民の一部からも自然環境保全を求める声があった。 資材高騰・人件費上昇といった経済的リスクも増大。
こうした状況により、当初の計画は縮小や見直しを余儀なくされ、最終的に「事業中断」という判断に至りました[2][3][4]。
地域・環境への影響は?
鹿児島大学の高隈演習林は、林学の研究や教育の場として重要な役割を担っています。
そのため大学側は、
学生の研究活動への影響 生態系の破壊リスク 希少種への影響
といった点を強く懸念しました[2][7]。
実際、全国的にも風力発電計画と自然保護が対立するケースは増えており、「再生可能エネルギーの推進」と「地域環境の保全」という2つの課題をどう両立させるかが大きなテーマになっています[2][3][8]。
まとめ:風力発電の普及に立ちはだかる現実的課題
今回の鹿児島・高峠での風力発電計画中断は、単なる「採算割れ」だけでなく、
大学の土地提供拒否 自然環境への懸念 資材価格高騰 人件費上昇 地域の人手不足
といった複合的な問題が重なった結果です。
国は再生可能エネルギーの拡大を目指していますが、現場レベルではこうした経済的・社会的・環境的な壁が依然として大きいことを示した事例といえるでしょう。
参考情報・引用元
[1] 鹿児島大も「待った」かけた上、資材高に人手不足…県内最大
[2] 大型風力発電、建設計画を中断 豊田通商系「資材高騰」
[3] 大型風力発電、建設計画を中断 豊田通商系「資材高騰」、鹿児島
[4] 豊田通商系「資材高騰」 – 大型風力発電、建設計画を中断
[5] 資材高に人手不足…県内最大規模の風力発電、採算合わず事業
[6] 資材高に人手不足…県内最大規模の風力発電、採算合わず事業
[7] 演習林開発、学会が調査 鹿児島大で大型風力計画 希少種生息
[8] 風力発電大手が規模縮小を検討 鹿児島大の演習林で計画