① 鴨川市メガソーラー問題とは?――森が消えた現場で何が起きているのか
2025年秋、千葉県鴨川市の山中で進められていたメガソーラー建設工事が突如として停止されました。
原因は、許可を受けていない森林約1.5ヘクタールの無断伐採。
県の調査で判明したこの“違法行為”により、千葉県は事業者に対して工事の一時停止命令と森林復旧計画の提出を指導しました。
(参考:Yahoo!ニュース)
このニュース、SNSや地域掲示板では「再生エネルギーの名を借りた自然破壊だ」と大きな波紋を呼んでいます。
現場では、山の斜面に大量の伐採木が放置されており、近隣住民からは「雨が降ったら土砂崩れが起きるのでは?」という声も上がっています。
再エネの旗印の下で進む巨大開発。
その裏で、環境保護と経済のせめぎ合いが起きているのです。
② 問題の発覚と経緯――“残置森林”をなぜ切ったのか?
鴨川市の山林にあるメガソーラー建設地では、県が定めた「残置森林区域」と呼ばれる“伐採してはいけない保全区域”がありました。
しかし、2025年10月、県職員が現地を視察した際に、その区域の樹木が多数伐採されているのを発見。
これが今回の行政指導のきっかけです。
(出典:産経新聞)
事業者である「AS鴨川ソーラーパワー合同会社」は、当初「誤伐採が一部あった」と説明し、工事の一時中止を発表しました。
ところが、その「一部」という範囲が実際には1.5ヘクタールにも及び、面積にしておよそ東京ドームの3分の1。
決して“誤って切った”では済まされない規模です。
現場では47万枚以上の太陽光パネルを設置予定で、出力は10万キロワット級。
地域の地形を大きく変える開発が進められていました。
しかし今回の許可外伐採によって、「そもそも環境影響評価は十分だったのか」という疑問が一気に浮上しました。
項目
内容
事業者
AS鴨川ソーラーパワー合同会社
予定パネル枚数
約47万枚
発電規模
約10万kW
許可外伐採面積
約1.5ha(東京ドームの約0.3倍)
行政対応
千葉県による工事停止命令+森林復旧計画提出要請
この問題は、単なる「手続き違反」ではありません。
環境への影響、安全性、そして行政の監視体制の甘さ――そのすべてが問われています。
③ メガソーラー事業の仕組みと環境リスク
そもそも、なぜ山林を切り開いてまでメガソーラーを設置するのか?
背景には、**再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)**があります。
この制度では、太陽光で発電した電気を国が一定期間・固定価格で買い取ってくれるため、投資としての採算性が高いのです。
しかし、平地では土地が確保しにくいため、開発の矛先が「山林」へと向かうようになりました。
結果として、全国で似たようなトラブルが発生しています。
地域
トラブル内容
三重県
地滑り危険区域で開発が進み、住民が反対運動を展開
北海道釧路湿原
開発許可取り消しを求める署名運動が拡大
千葉県鴨川市
許可外伐採により行政指導(今回の事例)
鴨川の山は急斜面が多く、森林には「雨水を吸収し、土砂崩れを防ぐ」という重要な役割があります。
その森を失えば、豪雨時の地すべりや水質汚染、野生動物の生息地破壊といった副作用が広がるのです。
また、伐採木をそのまま放置すれば、腐敗によるメタンガス発生や害虫の温床にもなりかねません。
“再エネ”の名の下に、新たな環境リスクが生まれてしまう――これがメガソーラー開発の“光と影”なのです。
④ 行政と利権の構造――なぜ止められなかったのか?
メガソーラー事業には、多くの行政・企業・金融機関が関わります。
特に地方自治体は、「再生可能エネルギーの推進」という国策の追い風もあり、開発を簡単に拒否できない立場にあります。
しかし一方で、住民への説明不足や、地元合意を軽視した計画も少なくありません。
鴨川市でも「いつの間にか山が削られていた」という声が多く聞かれました。
(参考:千葉日報)
こうした問題の根底には、“再エネビジネスの利権構造”が存在します。
太陽光発電は初期投資が大きいものの、長期的には安定した収益を生むため、土地取得・補助金・金融支援の過程で多層的な利害関係が生じるのです。
行政が監視の目を緩めれば、事業者は利益優先で開発を急ぎ、住民や環境への配慮が後回しになる。
まさに、今回の鴨川のケースがその典型といえます。
⑤ 専門家・著名人の声――「再エネ=善」ではない現実
この問題には、登山家であり環境活動家の野口健さんも現地を視察。
彼は次のように語りました。
「“再生可能エネルギーだから正義”という考え方は危険です。
森を壊してまで電気を作るのは本末転倒です。」
(出典:47NEWS)
環境保護団体「FoE Japan」も、「鴨川市田原地区の自然は貴重な水源地帯であり、伐採は地域全体の生態系に影響を及ぼす」と警鐘を鳴らしています。
一方で、「再エネを敵視してはいけない」という意見もあります。
重要なのは“バランス”。
再生可能エネルギー推進の理念を保ちつつ、自然との共存をどう実現するかが問われています。
⑥ まとめ――“緑を守るエネルギー”へ転換できるか?
千葉県鴨川市のメガソーラー開発は、許可外伐採という明確なルール違反によって中断しました。
行政は今後、復旧計画が提出されるまで再開を認めない方針です。
この一件が示したのは、「環境を守るためのエネルギーが、環境を壊している」という皮肉な現実。
そして、再エネ政策の“運用の甘さ”です。
私たちが求めるべきは、「再エネをやめること」ではありません。
むしろ、環境と共生する再エネの形を模索すること。
・開発前の環境調査を義務化する
・住民への説明会を法的に義務づける
・伐採後の復元や生態系保全をセットで行う
こうした地道な取り組みが、ようやく“真の再生可能エネルギー”につながるのだと思います。
自然の力を借りて未来を照らす――その理想を実現するには、今のような「利益優先型ソーラー」からの脱却が不可欠です。
森を守るエネルギー政策へ、今こそ転換の時です。
📚 参考・引用元:
開発許可外の森林を伐採、鴨川メガソーラー工事で行政指導 千葉・鴨川メガソーラー、許可条件違反の伐採判明 鴨川メガソーラー、未許可の森林で伐採 野口健さん鴨川メガソーラー視察 メガソーラー乱立の問題と環境リスク
